扁平苔癬

Q&A

歯科で口内に白いレース模様が出来ていて大学病院に行きましたが、1月に内服薬セファランチン、ハリゾンシロップ 、アズノールうがい薬処方されました。4月に受診しましたら状態変わらずで、アズノールだけ処方されました。偏平状のできものはうがい薬で治りますか?失望してます。
安原歯科医院の安原豊人です。
扁平苔癬という難治性の口内炎と考えます。
口腔扁平苔癬(こうくうへんぺいたいせん)は臨床的に多彩な所見を呈する難治性の慢性炎症性疾患で、発赤を伴ったレース状の白色病変を示すものが多く、30~50歳くらいの女性に多い疾患です。臨床的に、丘疹型、網状型、斑状型、萎縮型、びらん(潰瘍)型、水疱型の6型に分類されます。赤と白の網目状の病変が一般的であり、白い網目のすき間が赤色になっています。左右両側性に見られることが多いものです。
経過は慢性で非常に長く、1~10年のものあります。びらん性潰瘍を形成すると接触痛が強くなり、特に辛味食品に刺激されて強い痛みを訴えるようになります。
扁平苔癬の原因は不明ですが、上皮下のリンパ球浸潤の所見から、疾患の発現に細胞性免疫反応が関与していることは明らかです。しかし、その免疫反応の原因がわからない場合がほとんどで、可能性のある原因としては、金属アレルギー、薬(降圧剤、抗精神薬、利尿剤など)、肝炎ウイルスなどがいわれています。
完全な治療法はありませんが、重症例では副腎皮質ホルモンの全身投与を短期間おこないます。大部分の症例には副腎皮質ホルモンを含む軟膏の局所塗布が有効です。
当院では、びらん性潰瘍が広範囲の場合、帝人ファーマ㈱製造販売のサルコートⓇとパブライザーを処方することが多いです。カプセル剤ですが、飲むお薬ではなくパブライザーと呼ばれる小型噴霧器で噴霧します。ステロイドの噴霧薬です。ステロイドには炎症をとる強い作用があります。患部に噴霧することで、炎症による腫れや発赤、かゆみや痛みをやわらげます。患部に口腔カンジダ症などの真菌(カビ)による感染症を併発しているときにはカンジダ症の治療も行います。
そのほか、抗アレルギー剤、ビタミン剤、精神安定剤、漢方薬などが補助的に使われます。きわめて慢性に経過し、一度症状が軽快しても再発することも多いものです。
患者さんの多くは、癌を心配し精神的に不安定になることがよくありますが、一般的に扁平苔癬は、前癌状態というものにあたり、2~3%程度が癌化するとされています。これは、「癌発生の危険性が有意に増加した一般的状態」ではあるが、組織学的には粘膜の萎縮を示すという特徴があります。今のところ治療のゴールは、症状を軽減させることにあります。また、抗不安薬や漢方薬の服用を続けることで、寛解するケースもあります。当院ではぺプチサルⓇという歯磨剤やジェルを使用してもらうことにより治癒した例も経験しています。
ご担当の先生と治療方針についてよくご相談されることをお勧めいたします。

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安原歯科医院
院長 安原豊人